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 この時代には、もう一人俺がいるはずだ。タイムスリップした同じ時代の同じ時間に戻ったわけではないから。


「よして下さい。ジョエル様気味が悪い。俺は男ですよ、の趣味はありません」


「あはは、俺もだよ。彼女は日本から来たイチだ。もうすぐ目覚めるだろう。この地のこともこの国の言語も知らない。父や母には彼女もヴァンパイアということにしてくれ。そうでないと、父に吸血されてしまうかもしれないからな」


「な、なんと?イチ様は人間ですか?それは大変です。ヴァンパイアの城に人間とは、自ら餌になるようなもの」


「セバスティに特別任務を与えよう。イチをヴァンパイアから守るのだ。よいな」


「ヴァンパイアからイチ様を守る?俺もヴァンパイアですよ。城にいるものは全員ヴァンパイア。そのようなことが出来るはずがございません」


 セバスティは呆れたように、溜息を吐いた。


「不可能を可能にするのが、セバスティの役目だ」


「ご自分もヴァンパイアなのに、矛盾してますよ。もうすぐ晩餐です。イチ様を公爵様にご紹介した方がよいのでは?」


「……そうだな。わかった連れて行くよ」


 セバスティが退室したあと、俺はイチを揺り起こす。


「イチ……イチ……起きろ」


「ここは……。きゃあ、あなたは……!?」


「また忘れてしまったのか?俺はジョエルだよ。イチは時空を超えると記憶も飛ぶみたいだね」


「ジョエル……!?申し訳ございませぬ。ここは……どこでございますか?わたくし達は……北ノ庄城にいたはず」

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