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丈の発するひとことひとことが、わたくしの胸を熱くする。
丈を忍びではなく、織田の家臣に……。
わたくしの熱き想いは、募るばかりであった。
――天正十年。
“信忠軍は武田領を侵攻し、武田側の城を次々と占領した。武田軍は組織的な抵抗が出来ないまま滅亡した。
信長は三男神戸信孝や重臣の軍団を四国に派遣する準備を進めていた。北陸方面では柴田勝家が富山城、魚津城を攻撃した。”
――五月、徳川家康が安土城を訪れた。
「明智光秀殿、徳川家康殿の接待役を命ず」
光秀は接待役に命じられ、家康をもてなした。しかし信長は光秀の接待に不満を覚え何かにつけて叱咤した。
「上様、備中高松城攻めを行っている羽柴秀吉から使者が参っております」
「秀吉より使者?」
“秀吉より援軍の依頼を受けた信長は、光秀の接待役を解き、秀吉の援軍に向かわせた。”
光秀からすれば、誠心誠意家康を持てなしていたにも拘わらず任を解かれたことに、激しい苛立ちと憤りを感じ信長に強い反感を持つ。
「中国遠征の出兵準備のために上洛する。本能寺に逗留するゆえ、手勢は少なくて構わぬ。蘭丸(森成利)よいな」
「はい」
「伯父上様、行ってはなりませぬ」
「これは茶々姫ではないか。どうしたのだ」
「なにやら胸騒ぎがして安土城に参りました。伯父上様、上洛してはなりませぬ」
「上洛するなと?市の差し金か?」
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