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わたくしはその足で、地下の牢獄に向かう。牢番に兄上の意向を伝え、じめじめとした暗い地下を歩く。
このような暗闇の中に……
七年もの時を……。
行灯の明かりだけを頼りに進むと、記憶の中に……ある風景が甦った。
以前……このような薄灯りだけを頼りに、同じように暗い場所を歩いたような気がする。
――狭い……廊下……
その先には……
黒い……
牢番が牢の鍵を開けた。
牢獄の中に、足枷をされ横たわる丈の姿。
髪と髭は伸び……痩せ細った足には足枷。
足は擦り切れ血が滲み、ぼろぼろの着物は異臭を放ち生死すら定かではない。
黒装束を纏わぬ丈を見たのは、その時が初めてだった。
「……丈……生きておるのか?丈……」
丈の指先が微かに動いた。
「丈の無実が兄上にわかってもらえたのじゃ。罪は晴れたのじゃ。立てるか?」
「……はい」
「この者は無罪なり。この者に湯を使わせ新しき着物を与え、十分な食事を与えるのじゃ。よいな」
「ははぁー」
牢番はわたくしに膝まづき、直ぐ様丈の足枷を外し、体を支え牢から連れ出した。
わたくしは長き投獄により、丈が正気を失い狂っているのではないか、兄上の申した通り、餓死や衰弱死しているのではないかと心を痛めていたが、丈の生存を確認し安堵した。
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