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市side
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「お市の方様」
襖の向こうで羽柴秀吉の声がし襖が開いた。丈はわたくしから離れたが、天井に飛び移ることが出来なかった。
「くせ者め!!」
秀吉は刀を抜き、丈に刃先を向けた。丈は秀吉に背を向けたままだ。
わたくしは咄嗟に丈を庇う。
「よさぬか、羽柴殿。この清洲城で血を流す気か。この者は兄上がわたくしにつけた忍びじゃ。怪しい者ではござらぬ」
「殿の?」
秀吉は刀を鞘に収め、わたくしに
「お市の方様、申し訳ござりませぬ。この者の容姿が茶々姫様を襲ったくせ者によく似ておったゆえ……」
「黒い覆面をつけ忍びの恰好をしておったのであろう」
「そうでござった」
わたくしは丈に視線を向ける。
「丈よ、大儀であった。もう下がってよい」
「はい」
丈は秀吉に
「……青き……瞳か」
秀吉が丈の瞳の色に、怪訝そうに眉をしかめた。
「お市の方様、連日城の外に人斬りが現れ、織田に仕える武士が殺されております。茶々姫様を襲ったくせ者と同一人物だと思われます」
「人斬り?」
「はい、人斬りを目撃した者が申すには黒装束を見に纏っていたと」
「……黒装束」
「首を斬り落とし死体に火を放つ残忍な手口。茶々姫様を襲ったくせ者も、首筋に刃先を向けたとのこと。城の周囲の警護を固め、色々調べさせましたが、どうやらくせ者は城内に逃げ込んだもよう」
「……城内に!?」
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