市side
135
「茶々、大事はないか……」
「母上様……うぁーん」
茶々はわたくしにすがり、声を上げて泣いた。
「くせ者の顔は見なかったのですか?」
「丈と……同じ覆面をしておりました。黒装束でございます」
「丈と同じ黒装束……。くせ者は丈だと申すのか?」
「違いまする。丈は青き瞳。茶々を襲ったくせ者は、赤き瞳……」
「赤き瞳とな?」
「はい」
泣いている茶々を抱き締め、わたくしは天井を見上げる。丈と同じ忍び?この城に忍びは丈しかいないはず。
もしも忍びがいたならば、丈が知らぬはずはない。
まさか……丈が茶々を?
兄上の命令か?
浅井の血をひく三人の姫が憎いというのか……。
「お花、お花はおらぬか」
「お市の方様、お花は高熱があり床に伏せておりまする。流行り病ゆえ、暫くは誰も近付かぬ方がよいと申しております」
「高熱?ならば大局、茶々姫を頼みます。警護を強めるのじゃ。よいな」
「はい」
茶々を大局に委ね、わたくしは寝所に戻り丈を呼ぶ。
「丈、ここへ」
「はい」
目の前に降り立つ丈に、真っ直ぐ視線を向けた。
「丈、茶々の元に行ったであろう」
「はい」
わたくしは懐から脇差しを抜き、丈の首に突き付けた。
「茶々の命を狙うは、兄上の命令か」
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