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「茶々姫様、わたくしは何に見えますか?」
「丈は青き目をした忍びじゃ。綺麗な色をしておる。茶々の目は黒いゆえ、丈の目は海のごとく青く光っておる」
俺が吸血鬼だと、見抜けないということは……やはり幼子の夢に過ぎないのか……。
この愛らしき茶々姫が、ダンピールのはずはない。
「茶々、また丈を困らせておったのか?」
襖が開きイチが座敷に入る。茶々姫は俺に抱き着いたまま離れない。イチは呆れたようにクスリと笑った。
「ほんに、二人は仲のよいこと」
俺と視線が重なり、イチは慌てて目を逸らす。
「茶々、丈と何の話をしておったのじゃ?」
「黒狼の話でございます」
「またそのようなことを。茶々の夢でござりましょう。丈、幼子の戯言ゆえ取り合わなくてもよい」
「お市の方様、満更嘘ではないのかもしれません」
「嘘ではないとな?」
「近江の吸血鬼がこの清洲に紛れこんだのやも」
「まさか……」
もしかしたら……
吸血鬼は俺を狙って……?
それとも……。
「これ、茶々。いつまで丈に抱き着いておるのじゃ。もう寝所に戻らぬか」
「母上様、丈と一緒に戻ってよいですか?一人で寝るのは怖いゆえ、丈と一緒にいたいのです」
「それはなりませぬ。丈は忍び。丈のことを知る者はごく僅か。侍女で知る者はお花だけじゃ。茶々が眠るまで母が傍におるゆえ、安心するがよい」
「はい。丈、おやすみなさい」
「茶々姫様、おやすみなさいませ」
俺は天井へと飛び移り、大蝙蝠の姿となり城を抜け出し夜空を飛び交う。
清洲城の周りを彷徨く黒狼。もし茶々姫の言うことが本当だとしたら、同族を殺した俺への復讐?
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