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「茶々は父上と同じくらい丈を好いておるゆえ、茶々の傍にずっと仕えるがよい」


 茶々姫は俺にギュッと抱き着いた。

 小さなぬくもりが、不安げに俺の体にしがみつく。


 父長政を亡くし、茶々姫は幼いながらも胸を痛めているようだった。


「生涯、茶々姫様のお傍にお仕えいたします」


 茶々姫は俺に抱き着いたまま耳元で、怯えたように話し始めた。


「丈、城の外に黒い狼がおるのじゃ。夜になると城の周りを彷徨いておる」


「黒い狼でございますか?城の外など塀があるため、座敷から見えないではありませんか?」


「茶々には見えるのじゃ。母上様も大局も、誰も信じてはくれぬ。茶々が夢を見たと申すのじゃ」


「夢……」


「あれは夢ではない。城の中にも……」


「城の中にも狼ですか?」


「赤き目をした侍じゃ……」


「それは誰でございますか?」


「伯父上様の城で見たことがあるのじゃ」


「茶々姫様は……狼や赤き目をした魔物が見えるのですか?」


「丈は茶々の話を信じてくれるのか?」


 近江国にいた吸血鬼。

 山に火を放ち一網打尽にしたはずなのに、この清洲にも存在すると?


 茶々姫が吸血鬼を見極める能力があるならば、それは……茶々姫が吸血鬼と人間の混血ということになる。


 すなわち……

 茶々姫は俺の……。


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