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 丈は天板を開け、スッと降り立つ。

 久しぶりに丈と逢い、以前抱き締められたことを思い出し、動揺を隠せない。


「……丈、そなた長きに渡りずっとこの城に潜んでおったのか?」


「はい、江姫様ご誕生おめでとうございます」


「なんと……。わたくしは……織田との戦いに気をとられ、そなたを忘れておったというのに……」


「わたくしはお市の方様の影でございます」


「……丈。もうよい。織田に戻るのじゃ。兄上は浅井を攻める気なのじゃ。ここにいてはそなたの命をも危うい。即刻戻るのじゃ」


「それは出来ません。わたくしはお市の方様の傍に一生仕えると決めたのです」


「……魔物は退治したのか?」


「はい、連日退治しておりますが、多勢に無勢殺めるより増えるが多いかと。近日中に一網打尽にして見せます」


「近日中に?そうかよい策でもあるのか?」


 突然襖が開き侍女が姿を現す。


「お市の方様!織田軍が三万の軍勢を率いて再び北近江を攻め城は落城、越前に撤退した朝倉軍は、織田軍に追撃されました」


「なんと、それはまことか」


「織田の軍勢は浅井軍に向けられ、この小谷城に向かっております」


「兄上が……この城を……」


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