124
「何をおおせですか、わたくしは殿と共に戦います」
「お市……」
殿の腕に抱かれ、わたくしは兄上と決別することを決めた。
――“元亀元年六月、浅井は朝倉軍と共に、近江国姉川で織田徳川連合軍と戦い、織田軍に敗退した。”
「このまま終わらせてなるものか」
“浅井は九月に朝倉軍や延暦寺、一向宗徒と共に再び信長への攻勢を強め、織田信治らを撃ち取る。”
「殿……織田が足利に和睦の調停を依頼したそうです!」
「和睦だと?織田の謀に過ぎぬ」
信長はさらに浅井を追い詰め、“元亀二年浅井と密接な関係にあった延暦寺を比叡山焼き討ちにし、壊滅させた。”
「兄上は鬼じゃ……」
わたくしは織田と浅井の戦いに胸を痛め、吸血鬼のことは忘れていた。丈も織田に戻ったものと思っていた。
――元亀三年。兄信長は北近江に来襲した。
「朝倉義景に援軍を要請するのだ」
義景は一万五千の軍勢を率いて近江に駆けつけた。
「殿、将軍の要請で武田信玄が進発し、織田徳川連合軍を三方ヶ腹原にて撃破したとのことです。すでに武田軍は三河に向かったと」
「そうか、我が軍は北近江の織田軍をこの地に封じ込めるのだ!」
だが雪深き十二月、“朝倉軍が兵の疲労と積雪を理由に越前に帰国し、包囲網が緩み織田軍も美濃に逃げ延びた。”
「兄上が美濃に戻ったと……?」
「朝倉軍が撤退し、追撃は困難であった。武田が再度出兵要請の文を出したが、朝倉からの返事はない」
「朝倉殿に見離されたと?」
その後、“武田信玄の働きにより、徳川領の野田城を攻め落とした。”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます