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「丈、浅井朝倉軍は織田徳川軍へ挙兵することとなった」


「織田徳川軍と……。まさか、殿と戦うおつもりですか」


「浅井を先に裏切ったのは、兄上の方じゃ。もうわたくしの力ではどうにもならぬ。丈は織田の忍び。兄上に加勢するのであろう?」


「わたくしはお市の方様の命令にしか、従いません」


「わたくしの?」


「はい、わたくしはお市の方様に仕えし、忍びでございます」


「……それを聞いて安堵しました。浅井の戦略を織田に伝えてはならぬ。万が一の時は、茶々と初を頼みますよ」


「はい、命に変えても。姫君をお守り致します」


 たとえこの身が太陽に晒され滅びたとしても、俺はイチを守る。


「丈、実はもうひとつ気になることがあるのじゃ」


「もうひとつ?」


「茶々、もう休む時間ですよ。丈、乳母を呼ぶゆえ、姿を隠してはくれぬか」


「はい」


 俺は天井に飛び上がる。

 イチは廊下に視線を向けた。


「大局はおらぬか」


「お市の方様お呼びでございますか?」


「茶々と初を寝所に」


「はい、畏まりました」


 イチは二人の姫君を大局に委ねると、再び俺を呼び声を潜めた。


「丈、噂によると、浅井軍の家臣に奇病が流行っておるそうじゃ。戦いで死んだ家臣が生き返り、夜になると屋敷に戻り子をなすと。産まれた赤子は、すぐに死ぬそうな」

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