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 泣く赤子をあやす二人、子を囲み仲睦まじい姿に俺は寂しさを感じていた。


 イチの心も、イチの体も、今は長政のものだ。イチはもう、俺のものではないのだから。


 だが……

 無理に奪うことはしない。


 この国の歴史を変えてはいけないことくらい、この俺にもわかっている。


 廊下で家臣の声がした。


「殿、失礼つかまつります。お話が」


「無粋なやつめ、何用だ」


 障子が開き家臣が頭を垂れる。


「殿、夜分に申し訳ございませぬ。周辺で物騒な出来事が……。城下で生まれたばかりの赤子が相次いで亡くなっておるのです」


「赤子が?」


「はい」


「流行り病か?」


「それが奇妙なのです。産まれた時は元気な産声を上げるものの、数日で死んでしまうとか……」


「数日で?」


いくさで大勢の人を殺めた祟りだと、城下ではもっぱらの噂が……。茶々姫様もお産まれになったばかり、どうかお気をつけ下さい」


「ふむ、赤子ばかりが死ぬとな?乳母にも、しかと申し伝えるがよい」


「ははぁー」


 俺は天井裏でその話を聞き、胸騒ぎがした。城下での流行り病。生まれたばかりの赤子が……。


 愛らしい茶々姫が健やかに育つことを祈るばかりだった。


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