111
燃え盛る火の中でセバスティは絶命し灰となり、俺はイチと共に戦国の世にタイムスリップした。
イチは激しい時空の波にのまれ、平成の世の記憶も、俺との記憶も全て失った。
この地に降り立った俺は、セバスティが死の間際に授けた魔力で、髪の毛の色を黒に変えた。しかし青き瞳の色だけは変えることは出来なかった。
まだまだセバスティのような、完璧な魔術は使えそうにはない。
イチ……。
お前の傍にいたくて、俺は信長の忍びとなったのだ。
イチ……。
けれどお前は……
俺のことなど覚えてはいない。
俺と交わした……
熱き……口吻さえも……。
全て、時空の狭間に置き忘れた……。
戦国の世に戻ったイチは、書物の歴史的文献通り、浅井長政の元に嫁いだ。過酷な運命が待っているとは知らず、長政と幸せに暮らしている。
俺はずっと天井裏に潜み、鼠のごとくはい回る忍び。明るい太陽の下に出るわけにはいかず、埃にまみれ薄暗い闇の中で今も生きている。
――小谷城に戻った俺は、天井裏から、
黒髪をした黒き瞳の愛らしき姫。浅井長政に嫁ぐ前にイチが身籠っていた赤子だ。
イチは俺が初めての男だと思っていたが、イチはすでにあの時、妊娠していたというのか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます