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 ジョエルは棺から飛び出すと、隣の棺を開けセバスティを揺り起こす。


「セバスティ、起きろ。今すぐこの地から旅立つ」


「……ジョエル様、まだ陽が昇っております。今外に出ればこの身は灰になってしまいます」


「春乃が俺達の正体に気付いた。早く身を隠さなければ……」


 セバスティは寝ぼけ眼で、こちらに視線を向けた。


「これはイチ様!?イチ様が何故ここに!?」


 床で泣き崩れているわたくしにセバスティが視線を向ける。地下室の扉から黒い煙がじわじわと入り込む。焦げ臭い匂いが充満し、パチパチと赤い火の粉が見えた。


「セバスティ!春乃に火を放たれた!」


 地下室の入り口はひとつ。

 逃げ場を失ったわたくしは、ごほごほと咳き込む。地下室の中はすでに煙が充満している。


「ジョエル様、魔術で火は消せません!鼠に変身すれば地下室から逃げ出せます。早く鼠に!」


「それではイチを……連れて行けない」


「イチ様も、ヴァンパイアにしてしまえば、鼠に変身出来ます。ジョエル様、迷っている時間はありません」


「……セバスティ、お前一人で行け」


「ジョエル様!?」


「俺はもう十分生きた。イチと共に、ここで死ぬ」


「そのような事は出来ません!俺がイチ様を逃がします。だから、ジョエル様は先に逃げて下さい」


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