102
ジョエルは棺から飛び出すと、隣の棺を開けセバスティを揺り起こす。
「セバスティ、起きろ。今すぐこの地から旅立つ」
「……ジョエル様、まだ陽が昇っております。今外に出ればこの身は灰になってしまいます」
「春乃が俺達の正体に気付いた。早く身を隠さなければ……」
セバスティは寝ぼけ眼で、こちらに視線を向けた。
「これはイチ様!?イチ様が何故ここに!?」
床で泣き崩れているわたくしにセバスティが視線を向ける。地下室の扉から黒い煙がじわじわと入り込む。焦げ臭い匂いが充満し、パチパチと赤い火の粉が見えた。
「セバスティ!春乃に火を放たれた!」
地下室の入り口はひとつ。
逃げ場を失ったわたくしは、ごほごほと咳き込む。地下室の中はすでに煙が充満している。
「ジョエル様、魔術で火は消せません!鼠に変身すれば地下室から逃げ出せます。早く鼠に!」
「それではイチを……連れて行けない」
「イチ様も、ヴァンパイアにしてしまえば、鼠に変身出来ます。ジョエル様、迷っている時間はありません」
「……セバスティ、お前一人で行け」
「ジョエル様!?」
「俺はもう十分生きた。イチと共に、ここで死ぬ」
「そのような事は出来ません!俺がイチ様を逃がします。だから、ジョエル様は先に逃げて下さい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます