ジョエルside

95

「ジョエル、セバスティは……」


「セバスティは死にはしないよ。消毒液を塗り、一晩休ませれば傷は癒える」


「こんなに……深い傷なのに……。わたくしが看病いたします」


「大丈夫だ。心配いらないよ。イチはもう寝室で休め」


「……でも」


「いいから、部屋に戻れ」


「……はい」


 イチが退室したあと、俺はセバスティの腕や額の傷口を消毒し、セバスティの口元に俺の腕を近付け、ナイフでスーッと腕を切り裂いた。


 俺の腕から赤い血が滴り、セバスティの口の中にポタポタと落ちる。


 セバスティの咽がゴクンと音を鳴らした。見る見るうちに傷口が少しずつ治っていく。


 ――数分後、顔面蒼白だったセバスティの血色がよくなり、ゆっくりと瞼を開いた。俺は切り裂いた傷口を右手で押さえ、自分で止血し傷口を消した。


「……ジョエル様。……まさか……俺に血を……」


「セバスティ、気がついたか?良かった」


「ジョエル様……。危険を侵し、俺なんかを助けて下さり……ありがとうございました」


 セバスティはポロポロと涙を溢した。


「何を言っている。セバスティは俺にとって、大切な家族だ」


「俺のような身分の者に、有り難きお言葉……」


「セバスティ、マハラは人間だった。オルガに続きマハラが死に、きっと警察は犯人捜しに躍起になるだろう」


「……はい」


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