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狭い廊下を進むと、広い地下室が現れた。窓も灯りもない室内、湿気でジメジメしていて、微かに獣の臭いがした。
地下室には黒い棺が二つ。
棺の蓋を開けると、中は赤い布で覆われている。
「春乃さん……これは……」
「吸血鬼の棲みか。吸血鬼伝説を読んだでしょう。ジョエルもセバスティも仕事なんてしていない。太陽が昇っている間は、ここで眠っていたのよ」
「……まさか!?」
「二人はヴァンパイアだわ。地下室とこの棺が動かぬ証拠。私の姉を殺したのも、獣や家畜を殺したのも、オルガを死に追いやったのも、全てジョエルとセバスティの仕業だったのよ」
春乃は怒りに体を震わせた。
「嘘よ、二人が人を殺めるなんて……」
「イチ、しっかりして。あなたは人間なの。幸いジョエルにもセバスティにも吸血されてはいない。もし吸血されれば、あなたは死ぬかヴァンパイアになってしまうのよ。私達人間は、奴らの餌に過ぎないの」
「わたくし達人間は、餌……!?」
「そうよ、騙されないで。イチ、彼らを殺せるのはあなたしかいないわ。彼らを油断させ、眠っている間に殺すの。明日杭を渡す。その杭をジョエルとセバスティの心臓に打ち込むのよ」
「そんな恐ろしいこと、わたくしには、できませぬ!」
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