92
春乃をリビングに通し、エアコンのスイッチを入れ、キッチンでお茶の用意をする。
「ああ寒い。こんなに立派な暖炉があるのに、薪をくべてはならないなんて……。暖炉で火をつけるなってことよね。この暖炉は単なるインテリア……」
春乃はぶつぶつと呟きながら、暖炉を覗き込んだ。屋敷にある暖炉はとても大きく、少し屈めば人が中に入れてしまうくらい広い。
春乃は暖炉の中に入り、暖炉の正面の煉瓦に触れた。コンコンと右手で叩くと、左右の煉瓦よりも軽い音がした。
「春乃さん、何をしているのですか?」
春乃は暖炉の上部に目を向け、煉瓦を片っ端から押す。奥から三つ目の少し欠けた煉瓦を押すと、ギーッと鈍い音がし、正面の煉瓦が横にスライドした。
「やっぱりね……」
「春乃さん!?どういうことですか?」
「イチ、隠し扉よ。ここに地下室があるわ。一緒に来て」
「……地下室?」
躊躇しているわたくしの手を掴み、春乃は暖炉の中に引き摺り込んだ。持っていたお盆が落ち、湯飲みが床に落下しガチャンと音を鳴らし破損した。
暖炉の奥には灯りはなく、長い暗闇が広がっている。春乃はポケットの中に入れていたペンライトで用心深く暗闇を照らす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます