88
「姿を現したな、ヴァンパイア」
マハラは俺に鋭い眼差しを向けた。
暗い地下室から明るい室内へと出た俺は、眩さから一瞬目を細める。
「マハラ、セバスティを返してもらおうか」
「やはり、そうか」
マハラは鳥籠の鍵をデスクの上に置き、鋭い刃先を大蝙蝠に向けた。
「マハラ、お前もヴァンパイアだろ。いい加減、正体を現せ」
「俺がヴァンパイア?俺は人間だ。何を勘違いしている」
「お前が人間?家畜を殺し、一年前女性を吸血し投身自殺に見せ掛け、崖から投げ棄てたのはお前だろ!」
「ばかな、秋乃を殺したのはお前達だろ!」
「秋乃?」
マハラはデスクの上に、グサリとナイフを突き立てた。
「秋乃を俺が殺すはずはない。秋乃は俺の恋人だったんだ。秋乃と俺は結婚の約束をしていた。その秋乃が投身自殺をするはずがない。秋乃の首に二箇所の傷痕があったと春乃から聞き、俺は祖父から聞いたヨーロッパのヴァンパイア伝説を思い出した。周辺で家畜や獣が次々と死に、一年前に日本に来たお前達の仕業ではないかと、密かに調べていたんだ」
「……春乃の姉が、マハラの恋人?」
「俺は秋乃を殺したお前らに、復讐することだけを考えて生きてきた」
マハラはデスクに突き立てたナイフを両手で抜き取り、大蝙蝠の上に振りかざした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます