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「姿を現したな、ヴァンパイア」


 マハラは俺に鋭い眼差しを向けた。

 暗い地下室から明るい室内へと出た俺は、眩さから一瞬目を細める。


「マハラ、セバスティを返してもらおうか」


「やはり、そうか」


 マハラは鳥籠の鍵をデスクの上に置き、鋭い刃先を大蝙蝠に向けた。


「マハラ、お前もヴァンパイアだろ。いい加減、正体を現せ」


「俺がヴァンパイア?俺は人間だ。何を勘違いしている」


「お前が人間?家畜を殺し、一年前女性を吸血し投身自殺に見せ掛け、崖から投げ棄てたのはお前だろ!」


「ばかな、秋乃を殺したのはお前達だろ!」


「秋乃?」


 マハラはデスクの上に、グサリとナイフを突き立てた。


「秋乃を俺が殺すはずはない。秋乃は俺の恋人だったんだ。秋乃と俺は結婚の約束をしていた。その秋乃が投身自殺をするはずがない。秋乃の首に二箇所の傷痕があったと春乃から聞き、俺は祖父から聞いたヨーロッパのヴァンパイア伝説を思い出した。周辺で家畜や獣が次々と死に、一年前に日本に来たお前達の仕業ではないかと、密かに調べていたんだ」


「……春乃の姉が、マハラの恋人?」


「俺は秋乃を殺したお前らに、復讐することだけを考えて生きてきた」


 マハラはデスクに突き立てたナイフを両手で抜き取り、大蝙蝠の上に振りかざした。


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