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「急用?」
「ああ、そうだ。万が一、俺が大学に戻らなければ、先に屋敷に帰るように。タクシーを呼べは屋敷まで送ってくれる。大学の公衆電話にタクシーの番号は貼り付けてある。電話はコインを入れて掛けるんだよ。これがお金だ。決してマハラに付いて行かないように」
「公衆電話?タクシーとはどんな乗り物でございますか?」
「タクシーとは車だ。お金を支払えば屋敷まで乗せてくれる。屋敷には誰が訪ねて来ても入れてはいけない。いいね」
「……はい」
講義の最中にも、俺はセバスティの事が気がかりでならなかった。マハラが大学にいる隙に屋敷に忍び込み、セバスティを地下室から救い出さなければ。
イチを大学に残し、俺はバイクを走らせマハラの屋敷に向かった。
マハラの屋敷周辺は、俺達の屋敷同様森林に囲まれている。生い茂る木の後ろにバイクを隠し、俺は鼠の姿に変身する。
素早い動きで山道を走り、屋敷の床下に入り込む。床下を走り抜けると、地下に通じる入り口を見つけた。
木材と壁のわずかな隙間を走り抜け、俺は地下室に辿り着く。
地下室は普段使用されていないのか、周辺には無数の蜘蛛の巣。じめじめとしていてカビ臭く、地下室に棺は置かれていない。
バサバサと音がし、微かに「キキーッ」と鳴き声が聞こえた。地下室の隅に転がされた籠の中には、無惨にも片翼を折られた蝙蝠の姿があった。
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