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「……未来?タイムスリップ?」


「イチは時空を越えて、ここに来たんだ。もう戦国時代には戻れない。ここは未来なんだ」


「……まさか」


「どうせ、自害して果てる命なら、俺の傍にいろ。俺と共にここで暮らそう」


「……ジョエル。わたくしは兄上の元に、もう戻れないのですか」


「諦めろ。戻る手立てはない。その方法がわからないのだ」


「ジョエルは……」


「俺はヴァンパイアではない。俺を信じろ。俺は人間を吸血したりはしない。イチの命を奪ったりはしない。俺はイチを……愛してしまったんだ」


 イチを抱き締め、その体をソファーに沈める。イチは不安げな眼差しで俺を見つめた。


「わたくしを……愛していると……?」


「イチは俺が嫌いか?」


「ジョエルのことを想うと胸が苦しくて……。わたくしもジョエルと離れとうはない。ジョエルのことを好いております……」


「イチ……」


 イチを抱き締め、何度も唇を奪う。俺達は共に時空の波にのみ込まれ、この世に導かれた。


 それは違う時代に、違う国で生きるイチと、巡り逢うためだったのかもしれない。


 夜の闇に潜み、闇の中でしか生きられない俺が、暗闇の中で見つけた一筋の灯り……。


 それが……イチ……

 お前なんだ。



 ――夜明け前、ソファーで眠るイチを残し、俺は書斎を出る。


 いつもなら、俺を呼びにくるセバスティの姿が見えない。


 セバスティは部屋に戻った形跡もない。不思議に思った俺はリビングに入り、暖炉の中の隠し扉を開く。


 地下に通じる階段を降り、セバスティの棺を確認したが、セバスティの姿はなかった。


「セバスティが戻らないとは珍しいな。セバスティのことだ、洞窟にでも潜んでいるのだろう」


 俺はそのまま棺の中に入り、陽が落ちるまで眠った。


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