red 7

ジョエルside

80

「一年前投身自殺した女性が、春乃の姉?ジョエル様、それは本当ですか?」


「みたいだな。セバスティ、イチが書店で吸血鬼伝説の本を買ったようだ。それに、みんなの様子が変だと思わないか?」


 俺達の方を見て、何やらヒソヒソと陰口を叩いている学生達。明らかに態度が異なる。


「確かに、俺達を警戒しているようですね。ジョエル様、大学に来るのはもう危険かと」


「突然退学すると、余計怪しまれる。暫く様子をみよう」


「ジョエル様がそう仰るなら従いますが、人間と共存するなど所詮無理な話なのですよ」


 ブツブツと文句を言い放つセバスティと共に教室に入り、イチの隣に座る。


「イチ、顔色が真っ青だよ。どうした?体調でも悪いのか?」


「……何でもありませぬ」


 講義が始まっても、学生達の好奇な視線は俺達三人に向けられた。


 マハラの動向が気になりながらも、逆に俺達が皆から監視されているようで、教室の移動にも常に数名の学生に後をつけられているような気がした。


 講義や実習が終わり、俺達はバイクに跨がる。


 俺達の横をマハラの赤いポルシェが走り去る。車にはメリッサやルーシーだけではなく、美薗の姿もあった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る