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「私の姉は、去年の冬に亡くなったの。姉はとても綺麗で優しい人だった……」
「
「浜辺で遺体は見つかり死因は溺死だった。この近くの崖から飛び降りたらしいの。警察は自殺で処理したけど……、私、見たのよ。姉の首に二つの傷痕を。姉の遺体はすぐに火葬されたけど……、ずっとその傷痕が何だったのか気になってたのよ」
「首に二つの傷痕?」
「そうよ。仔牛や仔豚みたいにね」
「まさか、姉上の死が吸血鬼の仕業だと?」
「それがわからないから、知りたいのよ」
春乃はお茶をゆっくりと口に運ぶ。
「イチ、この屋敷に地下室はあるの?」
「地下室などありませぬ。以前、マハラにも同じことを問われましたが、見たことも聞いたこともありませぬ」
「マハラにも?そう。イチ、吸血鬼はね、太陽の直射日光に当たると体が灰になるのよ。だから、陽が昇っている間は活動出来ないの。棺の中で陽が沈むまで眠るの。吸血鬼が自由に動けるのは、陽が落ちた夜から朝陽が昇るまでの間」
「直射日光に当たると……体が灰に」
「そう言えば、ジョエルもセバスティも七月は大学に来なかったわね。夏休みも動物の飼育に顔を出さなかった。九月まで姿は見なかったわね」
「九月まで……?」
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