ジョエルside

69

 マハラの屋敷を見張る俺達。マハラの屋敷には、沢山の女が出入りし明け方までパーティーをし、ハーレム状態だった。


「ジョエル様、マハラは女をはべらせ遊び呆けているだけで、これといった動きはありませんね」


「そうだな。俺達が見張っていることを知っているのかな?」


「まさか。もう夜が明けます。屋敷に戻りましょう。朝陽が昇り始めます。マハラがヴァンパイアであるなら、奴も地下室で眠り行動することは出来ない」


「そうだな。屋敷に戻ろう」


 俺達は陽が昇る前に、屋敷へと戻った。寝室に入りイチの寝顔を眺める。


 頬に残る白いあと……

 これは涙のあと……?


「イチ……また泣いたのか?」


 なぜ、涙を……?


「ジョエル様、夜が明けます。早く地下室へ」


「わかった。すぐに行くから先に行け」


「わかりました」


 セバスティが寝室のドアを閉めた。俺はイチの体を抱き締める。


「……ジョエル」


「イチ、起こしてしまったようだな。まだ夜明け前、眠っていいのだよ」


「ジョエル……行かないで……」


「俺は仕事がある。陽が落ちたら戻る」


「お願い……一人にしないで……」


「イチ、子供みたいなことを言って俺を困らせるな」


 イチの唇にキスを落とし、俺はベッドから立ち上がる。ベッドの中でイチは涙に濡れた瞳で俺を見つめた。


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