red 6

市side

67

 屋敷に戻ったわたくし達は、食事を済ませ寝室に戻る。ジョエルとセバスティはいつものように赤ワインを飲んだだけだ。


「イチ、俺とセバスティはちょっと出掛けてくるから、先にやすんでいろ」


 いつものように二人は外出をすると言う。


「何処に行かれるのですか?夜道は危のうございます。もしも家畜殺しの犯人と出くわしたら……」


「心配しなくていい。俺達がいない間、屋敷の鍵は開けてはならない。たとえ誰が訪ねて来ても、決して開けてはいけないよ」


「……はい」


 ジョエルはわたくしに口吻をすると、そのまま寝室を出た。


 不安な気持ちを抱えたままシャワーを浴び、赤いバスローブに身を包む。


 ジョエルとセバスティが出掛け、一人でベッドに潜り込んだが眠れず、わたくしは寝室を抜け出しジョエルの書斎に行く。


 今が平成の世であるとしたら……。

 わたくしはどうしてここに……。


 机の上のペン立てからデスクの鍵を取り出し、机の引き出しを開ける。


 引き出しの中から、日本の歴史が書かれた書物を取り出す。


 ――江戸、明治、大正、昭和、平成……。


「平成……!?」


 美薗の申したことは、まことだったのか……。


 書物のページを戦国の世に戻し、自分のことが書かれているページを探す。


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