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 美薗と春乃がわたくしに背を向け、それに続くように女子が周囲から立ち去る。わたくしは広い校庭にポツンと取り残された。


「イチ、どうした?女子にハブかれたのか?寂しいなら俺が慰めてやろうか?」


「マハラ……。あなたとの事は誤解だと、メリッサやルーシーに話して下さい」


「この俺に昨夜のことを皆に話せと?それは断る。俺はイチが恋の相手なら不服はない。それよりも、イチは吸血鬼伝説をどう思う?ジョエルの屋敷には地下室があるはずだ。イチはその存在を知っているのか?」


「地下室でございますか?ジョエルの屋敷に地下室などありませぬ」


「そうかな?部屋のどこかに地下室に通じる隠し扉が必ずあるはずだ。屋敷を探してみるがいい。そこにジョエルの真実が隠されている」


「ジョエルの真実……」


「ジョエルが嫌になったら、いつでも俺の元に来い。俺が女の悦びを教えてやる」


 マハラはわたくしの頬にくちづけ、ニヤリと口角を引き上げ立ち去る。獲物を狙った獣のような鋭い眼差しに体が凍り付く。


「講義を始める。みんな教室に入れ」


 教授に促され、警察官の事情聴取を終えた生徒達はゾロゾロと教室に向かう。ジョエルとセバスティはまだ警察官から解放されてはいない。


 一人で教室に戻ったわたくしは、女子の好奇な視線に曝され、俯いたまま顔を上げる事は出来なかった。


 ――『ジョエルの真実』


 ――『屋敷には地下室がある』


 マハラの言葉が脳内で渦巻き、わたくしをさらに不安にさせた。

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