66
美薗と春乃がわたくしに背を向け、それに続くように女子が周囲から立ち去る。わたくしは広い校庭にポツンと取り残された。
「イチ、どうした?女子にハブかれたのか?寂しいなら俺が慰めてやろうか?」
「マハラ……。あなたとの事は誤解だと、メリッサやルーシーに話して下さい」
「この俺に昨夜のことを皆に話せと?それは断る。俺はイチが恋の相手なら不服はない。それよりも、イチは吸血鬼伝説をどう思う?ジョエルの屋敷には地下室があるはずだ。イチはその存在を知っているのか?」
「地下室でございますか?ジョエルの屋敷に地下室などありませぬ」
「そうかな?部屋のどこかに地下室に通じる隠し扉が必ずあるはずだ。屋敷を探してみるがいい。そこにジョエルの真実が隠されている」
「ジョエルの真実……」
「ジョエルが嫌になったら、いつでも俺の元に来い。俺が女の悦びを教えてやる」
マハラはわたくしの頬にくちづけ、ニヤリと口角を引き上げ立ち去る。獲物を狙った獣のような鋭い眼差しに体が凍り付く。
「講義を始める。みんな教室に入れ」
教授に促され、警察官の事情聴取を終えた生徒達はゾロゾロと教室に向かう。ジョエルとセバスティはまだ警察官から解放されてはいない。
一人で教室に戻ったわたくしは、女子の好奇な視線に曝され、俯いたまま顔を上げる事は出来なかった。
――『ジョエルの真実』
――『屋敷には地下室がある』
マハラの言葉が脳内で渦巻き、わたくしをさらに不安にさせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます