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「その唇に、毎夜キス出来るなんて、想像しただけでぞくぞくしちゃう」


 メリッサはわたくしの髪と首筋の間に手を滑り込ませ、黒髪を掻き上げる。


「白い首筋に淫らな赤いキスマーク。イチも隅におけないわね。ジョエルとラブラブなのに、マハラまで誘惑するの?昨夜マハラの屋敷に行ったでしょう。長い黒髪がベッドに落ちてたの。これは、イチの髪の毛かしら?」


 メリッサはわたくしの目の前でハンカチを広げ、一本の髪の毛を見せた。この学園に長い黒髪の女性はいない。マハラのベッドに落ちていたのなら、わたくしのものに違いない。


「やだ、イチ。ジョエルがいながら、マハラともうそんな関係に……?」


 美薗が驚きの声を上げた。


「違います。それは……」


「私達はマハラの恋の奴隷。マハラに何人女がいても構わないけれど、清純ぶって男子を誘惑し二股するのは許せないわ」


「二股とは……?」


「複数の男性と付き合うことよ」


「……わたくしはそのようなことは」


 されど許嫁がいながら、わたくしはジョエルと……。美薗の言ってることは間違ってはいない。


「美人だからってあまり調子に乗っていると、私達も黙ってないから」


 メリッサとルーシーは、わたくしに背を向けた。メリッサの話を聞いていた女子も、一斉に冷たい視線を向ける。


「イチ、見損なったわ。ジョエルがいながら、マハラと寝るなんて。最低な女ね」


「美薗さん、違います。わたくしは……」




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