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「ヴァンパイアは本当に存在するかも」


 マハラが口角を引き上げ、俺達を真っ直ぐ見据えた。


 教室では生徒達が窓から身を乗り出し、牛舎の隣にある豚小屋を見下ろしている。


「イチ、行ってみよう。警察もマスコミも来てるわ」


 美薗がイチの手を掴む。


「でも……」


 イチが俺に視線を向け、『行ってもいいですか?』と、目で問う。


「ジョエル、イチを借りるわね」


 イチは数名の女子と一緒に教室を出た。それにつられ男子も一斉に飛び出す。騒然とする校庭。校庭には数台のパトカーが停まり、もはや講義どころではない。


 教室に残っているのは、俺達とマハラ。

 セバスティはマハラににじり寄る。


「マハラ、お前の正体はわかっているんだ」


「俺の正体?お前らの正体じゃないのか?お前らがこの地に来て、不吉な事件が相次いで起きている」


「どういう意味だ」


「いつか、暴いてやるよ。お前らの正体を」


 マハラは俺達に背を向け教室を出た。


「ジョエル様、マハラはヴァンパイアではないのでしょうか?俺達が犯人だと決めつけているようです」


「マハラの正体はまだわからない。オルガのこともある。証拠を掴むまで手荒なことは出来ない。セバスティ、暫くマハラを見張ってくれ」


「畏まりました」


「イチのことが心配だ。俺はイチの傍に行く」


「はい」


 俺達も教室を出て校庭に向かう。

 校庭ではメリッサやルーシーに囲まれ、不敵な笑みを浮かべながら仔豚の死骸を眺めているマハラの姿があった。

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