57
シャワーを浴び、白い肌に浮かび上がる赤い刻印を目にし、ジョエルとの夜伽を思い出し体が火照る。
平常心を保つために洋服に着替え、一人きりで朝食を済ませ、いつも通り屋敷の掃除をした。
今朝もジョエルとセバスティの姿はない。きっと二人は夕刻まで屋敷に戻っては来ないだろう。
リビングや寝室の掃除を終え、ジョエルの書斎に入る。本棚に並ぶ書物を手に取り、机の椅子に腰掛ける。
手にしたのはヨーロッパの歴史が書かれている分厚い書物。ジョエルの祖国がどういうところなのか知りたくて、書物を開いた。
書物の表紙が、机の上に置いてあったペン立てにあたり床に落ちた。ペンが床に散乱し慌てて立ち上がる。
「いけない……」
床にしゃがみ込み、散乱したペンを拾い集める。
「これは……」
一本の金物が床に落ちている。
「……これは鍵?」
何処の鍵なのか興味を抱き、書斎の中を見渡した。
書斎の中には、机と本棚とソファーとクローゼットのみ。
その鍵を机の引き出しの鍵穴に差し込み、右に回した。カチッと小さな音がし、
その時のわたくしは、小さな子供が興味本位に秘密の箱を開けるくらいの軽い気持ちだった。
抽斗を開けると、中には一冊の書物が入っていた。『日本の歴史』と表紙に書かれている。
日本とは、この国のこと……?
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