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「これはジョエルとセバスティ。深夜に他人の屋敷のバルコニーから入り込むとは、随分無礼なやつだな。どうやってバルコニーに上がり込んだ」
「無礼はどっちだ。俺達が居ない間に屋敷に入り込みイチを浚うとは。……イチを返してもらおうか」
「イチを浚う?イチは自分の意思でここに来たんだ。イチは俺の腕の中で眠っている。邪魔者はさっさと消え失せろ」
「イチが眠っている?マハラ、イチに何をした。何を飲ませた」
マハラはニヤリと口角を引き上げ、俺の目の前でイチの頬に舌を這わせた。
俺は宙を舞いマハラに飛び掛かり顔面を殴り、ベッドに横たわるイチを抱き上げた。
「ジョエル!イチは俺のものだ!」
俺に殴り掛かろうとしたマハラの腕をセバスティが掴み、威嚇するように「フーッ!」と、牙を剥いた。
「……お前達……まさか」
マハラが驚愕し、俺達に疑惑の目を向けた。
俺はイチを抱き上げたまま、二階のバルコニーから飛び降りた。セバスティも俺の後に続く。
「イチ、起きろ。イチ」
「ジョエル……」
「迎えに来たよ。俺にしがみつけるか?」
「……はい」
イチをバイクの後ろに乗せ、俺は二階を見上げた。二階のバルコニーからマハラが俺達を見下ろしている。
その口元には、不敵な笑みを浮かべていた。
「ジョエル様、長居は無用です。屋敷に戻りましょう」
エンジンを吹かせ、夜風をきり山道を走る。イチは俺にしがみつき、俺はそのぬくもりに安堵する。
空には星が煌めき、満月が優しく見守るように俺達の行く先を照らした。
屋敷に戻った俺は、イチを抱き上げたまま二階の寝室に入りベッドに降ろす。美しい肢体がベッドに沈む。イチは不安な眼差しで俺を見上げた。
「……マハラのお屋敷でみんなでパーティーをするからと誘われ、リビングで赤ワインを口にし……急に目眩が……」
「屋敷にはマハラとイチ以外誰もいなかった。それはマハラの策略だ。きっとワインに睡眠薬でも入っていたのだろう。どうして、俺の言いつけを守れない。屋敷で待っていろと言ったはずだ」
「……申し訳ございませぬ」
「自分の意思でマハラの屋敷に行ったのか。マハラに抱かれるつもりだったのか」
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