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「セバスティ、イチが何処にもいない!」


「イチ様が?トイレや浴室では?」


「どこにもいないんだ。こんな深夜に……一体何処へ……」


 ――『イチがマハラとキスをしていた』

 オルガの言葉を思い出し体が凍り付く。


「セバスティ、俺はマハラの屋敷に行く」


「わかりました。お伴いたします」


 俺達はバイクに跨がり、マハラの屋敷に向かった。深夜一時、空には蝙蝠が飛び交っている。


 マハラの屋敷に到着すると、敷地内に赤のポルシェが停まっていた。それはマハラが自宅にいることを暗示している。


 屋敷は静まり返り、一階の明かりは全て消え、微かに二階の窓からぼんやりと明かりが漏れているだけ……。


 屋敷の玄関の鍵は施錠され入る事は出来ない。俺達は大蝙蝠に姿を変え、二階のバルコニーに降り立つ。


 二階の寝室は窓が少しだけ開いていて、黒いカーテンが夜風にユラユラと揺れていた。


 妖しげな赤い照明の下で、ダブルベッドに横たわるのはイチとマハラの姿。


 マハラはイチの長い黒髪を掻き上げ、白い首筋に唇を近付けた。


 照明の下でマハラの妖艶な眼差しが光る。唇が微かに開いた。


「マハラ、何をしている!」


 バルコニーに立ち窓を開け放った俺達に、マハラはベッドに横たわったまま動じる事なく視線を向け冷たく言い放った。

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