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「イチも……?」


「そうだ。イチの立ち振舞いや言葉使いは、美薗や春乃とは明らかに異なる。イチもヴァンパイアに違いない」


「ばかな、イチは日本人だ。イチほど純粋な女はいない」


「さぁ、どうだかな。お前、知らないのか?イチが今日大学でマハラとキスしたことを」


「イチがマハラとキス……!?」


「くくくっ、自分の女が他の男に唇を奪われても知らないなんてな。それともアレは罠か?イチの美貌でマハラを堕とし、お前らも餌にありつく手筈か」


「イチが……マハラと……」


 イチがマハラとキスをしたと聞き、俺は動揺している。


「俺はこの地で真面目に酪農を学んでいる。この仔牛は俺が世話した牛が産んだ仔牛だ!それを殺すなんて、俺はお前らを一生許さない!」


 オルガの叫び声に、牛舎の外がざわざわと騒がしくなった。


「オルガ!何をしている!牛舎の戸を開けろ!」


 ドンドンとドアを叩き、罵声が響く。それはホワイト牧場の牧場主とその従業員達だった。


「ジョエル様、ここは一先ず退散しましょう」


「そうだな」


 牛舎の戸を蹴破り、人間がなだれ込んだ。瞬時に俺とセバスティは大蝙蝠へと姿を変え、牛舎から飛び立つ。


 オルガはくわやこん棒を持った人間達に囲まれ、仔牛を殺した犯人として捕らわれた。


「俺じゃない……。俺じゃないんだ……」


「仔牛を殺したのはお前だな!ここにはお前しかいなかった!」


 数名の従業員に集団暴行され、オルガは血だらけとなり、ふらつきながらも必死で抵抗し牛舎から逃げ出した。


「俺じゃない……。信じてくれ!俺は仔牛を殺していない……!」


「待てー!オルガを逃がすな!」

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