ジョエルside

50

 ホワイト牧場に着いた俺達は、大蝙蝠から鼠に姿を変え、建物の隙間から牛舎の中に入った。


 牛舎の中には仔牛が数頭いた。大学で飼育している仔牛も、この牛舎で保護されているはずだ。


 牛舎の隅に積み重ねられた藁の後で、ガサガサと音がした。


 俺とセバスティは鼠の姿のまま近付く。


 すると……

 そこには息絶えた仔牛を抱きかかえたオルガの姿があった。


 オルガは鼠に気付くと、物凄い形相で足で蹴散らした。俺達はコロコロと地面を転がる。


 オルガの腕の中には息絶えた仔牛。足元にももう一頭の死骸……。


 二頭は大学で飼育されていた仔牛だった。


「やはり、お前だったのか」


 俺達は鼠から人間に姿を変える。


「ジョエル!セバスティ!いつの間に。牛舎の鍵は施錠したはず……。まさか、お前達が犯人なのか!?」


「オルガ、犯人はお前だろう。正体を現せ、お前はヴァンパイアだ!」


「ふざけるな。俺は仔牛が心配で様子を見に来ただけだ。牛舎の鍵も牧場主から借りた。俺が仔牛をあやめるわけないだろう!お前達こそが、家畜を殺した犯人だ!」


「そんなバカな……」


「施錠された牛舎に入り込めるのは、自由に姿を変えれるヴァンパイアしかいない!前から怪しいと思っていたんだ。お前達もイチも、この世の人間ではない!」


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