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ドアを開け外に出ると寒さが肌に凍みる。
「イチ、おいで」
運転席にはマハラ。車には他に誰も乗っていなかった。
「マハラ、みんなは?」
「もう屋敷でパーティーをしているよ。イチ、さぁおいで」
車に乗り込むと、マハラは笑顔で車を発進させた。ジョエルの屋敷から二十分くらいの距離に、マハラの屋敷はあった。
山中に聳え立つ屋敷。外壁は黒い煉瓦、棘のある木のツルが煉瓦の壁を這うように囲っている。ジョエルの屋敷とは雰囲気が異なり、不気味な印象がした。
「さあ、おいで」
マハラに手を取られ、車から降りる。
黒塗りの木製のドアを開き屋敷の中に入ると、玄関の天井には大きなシャンデリア。照明は薄暗く、歩く度に床はギシギシと音を鳴らした。
「驚いた?古い建物だからね。でもアンティーク調でお洒落だろ?お祖父様が中世のヨーロッパが好きで、古い家具を集めたんだよ」
「お祖父様と一緒に住んでいるのですか?」
「いや、もう亡くなったけどね」
玄関の壁には、老人の肖像画が飾られていた。髪は肩まであり白髪。書物で見た貴族や伯爵のような、高貴な衣装を身につけていた。
「ご病気で亡くなられたのですか?」
マハラはわたくしの質問には答えず、リビングに案内した。
広いリビングには色鮮やかな赤いソファー。屋敷の外観や部屋の色調は黒なのに、そこだけが奇抜で異質に感じられた。
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