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 突然唇を奪われ、マハラを突き放す。


「マ……ハラ!?」


「深夜零時、ジョエルもセバスティも屋敷にはいない時間だ」


「……どうしてそれを?」


「ジョエルは夜遊びが過ぎるからな。ああ見えて、美しい女には目がない。毎夜女を求めてさ迷っている。ジョエルの真実を聞きたくないか?」


 ジョエルの真実?

 毎夜おなごを求めてさ迷っている?


 突然奪われた唇と、マハラの言葉に、わたくしは混乱していた。


 ジョエルが深夜寝室を抜け出すのは、おなごに逢うため?


「イチ、帰るよ」


「……は、はい」


 廊下からジョエルに呼ばれ、鞄を胸に抱き教室を出る。ジョエルはわたくしの鞄を奪うと、直ぐさま手を掴んだ。


「イチ、マハラと何をしていた?何を話した?」


「……いえ。何も……」


 初めてジョエルに嘘をついた。ジョエルの真実が知りたくて、わたくしは嘘をついた。


「今夜もセバスティと出掛けるが、俺達が屋敷にいなくても心配いらないからね」


 今夜もセバスティと出掛ける?

 マハラの言った通りだ。


 二人は早朝から夕刻まで仕事に行き、深夜になると屋敷を抜け出し出掛ける。


 屋敷で食事をしないのは、好いたおなごと一緒に食事をするため……。


「戸締まりをして、早く休むように。いいね」


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