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「イチはジョエルが好きなの?」


「好き?」


 美薗の言葉に、思わずジョエルの顔を見つめる。ジョエルと視線が重なり、トクンと鼓動が跳ねた。


「好き……?」


 殿方を好くなどと……

 今まで思うたこともない。


「ジョエルやセバスティもイケメンだし魅力的だから、一緒に暮らしていれば好きになるのも無理はないかも。でも、この大学で一番カッコいいのは、やっぱりマハラだよね」


「マハラ……」


 おなごを両脇に抱えている様は、芸者遊びをしている殿方にしか見えない。


 背中に視線を感じ……

 わたくしは振り返る。


 その視線は……

 どこか寂しげな、オルガの眼差しだった。


 ◇


 ――講義を終えたわたくしに、マハラが近付く。


「イチ、今夜屋敷でパーティーをするんだ。是非遊びにおいでよ」


「でも……」


「車で迎えに行くよ。美薗や春乃も来るし、メリッサやルーシーもいる。だからおいでよ」


 ジョエルの姿を探したが、ジョエルはセバスティと教室を出たまま、姿は見えなかった。


「いいだろう?」


「……ジョエルに聞いてみないと」


「ジョエルに?ジョエルの言いなりなんてつまらないだろう。君はジョエルの飼い猫じゃないんだ。その美しい唇は……ジョエルだけのものじゃない」


 不意にマハラの顔が近付き、わたくしの唇を瞬時に奪った。

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