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「ジョエル様、家畜の変死はどうやら俺達が、この地に堕ちた頃から始まったようです」


「俺達がこの地に堕ちた頃から?」


「十二世紀ヨーロッパで起こった吸血鬼狩り、あの時、時空を超えたのが俺達だけではなかったとしたら……」


「他のヴァンパイアが同じ時期にこの地に堕ちたと?」


「俺達が大学に通い始める前に、すでにマハラは入学していた。俺達の後から留学して来たのはオルガだけです」


「オルガの動向が調べられるか?」


「オルガは、確か牧場にホームステイしている。その牧場でも仔牛が何頭か殺されたようです」


「セバスティ、オルガのホームステイ先に潜入出来るか?」


「わかりました。今夜、奴の動きを見張ります」


 セバスティは直ぐさま大蝙蝠に姿を変え、開け放たれた窓から夜空に飛び立った。


「ジョエル、入っても宜しいですか?」


 書斎をノックする音がし、ドアの外でイチの声がした。


「いいよ」


 イチは室内に入ると、壁一面に並ぶ書物に目を見開く。


「たいそうな数の書物でございますね。ジョエルは勉学がお好きなのですね」


「俺は色んな事に興味があるだけだ」


「セバスティの声がしていたようですが、ご一緒ではないのですか?」


「セバスティはさっき出掛けたよ」


「こんな夜更けに?」


「イチ、夜は冷える寝室に戻ろう。先に行ってろ」


「はい」

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