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「白くて美しい首筋。男なら誰でも吸い付きたくなるな」


 オルガがニヤニヤしながら、イチを見つめた。


「厭らしい」


 美薗はオルガの言葉に顔を歪める。


 オルガはマハラみたいに女性にモテる風貌ではなく、大学でも女性から敬遠されている。


 モテないくせに、美しい女にはやたらと興味を示す。大学でも一際美しいイチを、マハラもオルガもメスに群がる獣みたいに狙っている。


 ――まさかあの二人が……

 ヴァンパイア?


 こんな田舎に、ヨーロッパやルーマニアから次々と留学生が訪れるなんて不自然だ。


 もしかして……あの二人も……。

 俺達やイチみたいに、時空を超えてこの地に堕ちたとしたら……。


 これ以上イチを大学に通わせるのは、危険を伴うかもしれない。


 だからといって、イチを一日中屋敷に閉じ込めておくのも、心配でならない。


 ◇


 ――それから数日後、大学で飼育されている動物だけではなく、周辺の村で飼育されている家畜にまで被害が及ぶようになった。


 家畜は食い荒らされた様子もなく、体の血を一滴残らず抜かれた失血死だった。


 大学の噂が村に飛び火し、村人も吸血鬼の仕業ではないかと騒ぎ立て、奇妙な噂が村中に流れた。


「セバスティ、あまりにも被害が拡大し過ぎではないか?」


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