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 牛舎をあとにし、俺達は教室に向かう。

 他の学生もゾロゾロと続く。


 学生は吸血鬼の話で持ちきりだが、イチは何故か不機嫌で浮かない顔だ。


「ジョエルもセバスティもわたくしをからかったのですね」


「えっ?」


「ヴァンパイアを食するだなんて、わたくしに嘘を教えました」


 イチは口を尖らせ不満を漏らすが、まるで子供が拗ねているようで、その仕草も妙に可愛い。


「何だ、そんなことで怒っているのか」


「みんなの前でとても恥ずかしい思いをしました。ジョエル、この国は物の怪が住んでいるのですね」


「ヴァンパイアが物の怪?」


「人の生き血を吸うなど、物の怪の仕業に違いありません。ジョエル、そうでございましょう?」


「イチがそう思うのなら、ヴァンパイアは物け怪かもな」


 俺とセバスティは顔を見合せる。この地に俺とセバスティ以外のヴァンパイアがいる。


 もしかしたら……

 この大学にヴァンパイアが?


 イチを教室に行かせ、俺達は廊下の隅で話しをする。


「ジョエル様、どうやら俺達以外にも同族がいるみたいですね」


「そのようだな」


「家畜を殺した犯人を、セバスティ調べてくれないか」


「畏まりました」


 俺達が教室に入ると、マハラとイチが親しげに話をしていた。

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