ジョエルside

33

「イチ様、何でもございません。またジョエル様に叱られてしまいますからね。おお怖い怖い」


 セバスティはケラケラと声を上げて笑った。


 バイクを走らせ大学に向かうと、牛舎の前で学生達が騒然としていた。


「あっ、ジョエル。昨日産まれた二頭の仔牛が殺られたのよ」


「仔牛が?」


「さっき獣医さんが言ってたんだけど、血液だけが抜き取られていたらしいの」


「まさか?」


「注射器で抜いたのかな?一体何の為?何かの研究?それとも宗教的な儀式?どちらにしろ薄気味悪いわ」


 美薗が眉をしかめ牛舎を見つめた。セバスティが俺を見て、自分ではないと首を左右に振り否定した。俺も同時に目で違うと打ったえる。


「よっ、みんなお揃いでどうしたんだよ?」


 マハラが女子に囲まれ大学に現れた。


「仔牛がまた殺されたの。山の中にも、獣の死骸が転がっているらしいわ。全身の血液が抜かれ、まるで吸血されたようだと村人が騒いでいる」


「美薗さん、吸血って?」


「イチはルーマニアやヨーロッパで知られている吸血鬼伝説を知らないの?」


「吸血鬼伝説?」


「人の生き血を吸うヴァンパイアよ」


「ひ、人の生き血……!?ヴァンパイア……!?」


 イチの視線が俺達に向く。視線を逸らせ俺とセバスティは白々しく口笛を吹きながら、夜空を見上げた。

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