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「毎日何もせず、ジョエルやセバスティに世話になるなど出来ぬ」
わたくしは食事を済ませると、寝室に戻り洋服に着替え、掃除道具を探す。
物置に箒は見当たらず、不思議な形をした道具があるだけ。楕円形の物体には小さな車輪がふたつあり、細長い筒状のものが装着され先端は平らな形をしている。
「まるで、大蛇のようじゃな」
物置でバケツと雑巾を見つけ、床の拭き掃除をする。【リビングルームとダイニングルーム、寝室以外の部屋は勝手に立ち入らないこと】ジョエルからそう指示されていたわたくしは、ジョエルの指示通り、それ以外の部屋には立ち入ることはしなかった。
夕刻になり陽が沈む。掃除を終えたわたくしは、庭に出て花を愛でる。
外灯に照らされた綺麗な花々。西洋の花なのか、城の周辺では見たことがない品種ばかりだ。
「鮮やかな色じゃのう。痛いっ……」
綺麗な花には刺があり、わたくしの白い指先に血が滲んだ。
「それは薔薇だよ。イチ、血が出ている。怪我をしたのか?」
ジョエルはわたくしの指から滴り落ちる血を見つめ、一瞬ハッとしゴクンと息をのむ。
「セバスティ、消毒液と絆創膏をここへ」
傍にいたセバスティがわたくしの指を掴み、口に運ぼうとした。
「セバスティ!消毒液と絆創膏だ。聞こえないのか!」
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