30

 日が昇り夜空が白くなり始めた頃、ジョエルがすっとベッドを降りた。


 わたくしを起こさないように、ジョエルは寝室を出る。隣室のドアが開く音がし、セバスティの足音がした。


 ジョエルとセバスティ二人の足音が階段を降りて行く。一階にあるリビングのドアが開き足音が途絶えた。


 こんなに朝早く何処に行ったのだろう。まだ夜明け前だというのに……。


 ジョエルの温もりが残るベッドの中で、わたくしはまた浅い眠りについた。


 ――陽が昇り寝室に光が差し込む。太陽の光が眩しくてわたくしは目を覚ます。


「……ジョエル?」


 ネグリジェのまま寝室を出て、階段を駆け下りダイニングルームに入る。ジョエルもセバスティもそこに姿はなく、ダイニングテーブルの上には食事が並んでいた。


 テーブルの上にはジョエルからの手紙が置かれていた。


【セバスティと仕事に行ってくるよ。陽が落ちる頃には帰る。帰宅後は大学に行くから、身支度を整えて待っているように。

 リビングルームとダイニングルーム、寝室以外の部屋には勝手に立ち入らないこと。暖をとるときは、暖炉に薪をくべてはならない。必ずエアコンを使用すること。

 ジョエル】


 仕事?

 早朝から陽が落ちるまで?

 ジョエルとセバスティは一体何の仕事をしているのだろう。


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