24
イチが……
僅か三十七の若さで自害……!?
「ジョエル様、何を気難しい顔をしているのです?日本の歴史ですか?俺達はこの国に永住する訳ではありません。いずれ元の世界に戻れるはず。この国のことを学ぶなんて無意味ですよ」
「セバスティ、どうすれば時空を超えられるというんだ?その方法がわからないから、俺達は今もこの地にいるんだ。それに、俺が調べていたのは……イチのことだよ」
「イチ様でございますか?」
「これを見ろ。イチが住む尾張国とは日本のことだ。イチは戦国武将織田信長の妹。イチも時空を超えてこの地に来たんだ」
「イチ様も我々のように時空を超えたのですか?」
セバスティは俺の開いたページを熱心に読み漁る。
「お市の方が、イチ様でございますか?同姓同名でしょう。同じ名前なんてこの国には、ごまんといる。イチ様は記憶障害なだけです」
「イチの着ていた着物や髪型も、この時代の人物画とよく似ている」
「それって、コスプレってヤツでしょう」
「セバスティふざけるな。俺は真剣なんだ」
「ジョエル様、イチ様の正体なんて関係ないではありませんか。イチ様は人間、俺達はヴァンパイア。吸血する者とされる者。それだけです」
セバスティは口を大きく開き、右手の人差し指で伸びた牙に触れる。
「ジョエル様、腹が減りましたね。狩りに行きましょう。そうでないと、空腹に耐えきれずイチ様を襲ってしまうかもしれません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます