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「ジョエルとセバスティは今夜も食さないのですか?」
「俺達は夜はワインしか飲まない主義でね」
「ワインだけですか?わたくしだけがこのような豪華な食事をしてもよいのでしょうか」
「気にしなくていい。沢山食べろ」
「そうでございますよ。綺麗な血液を作れるように鉄分の多い食材を用意致しました。海藻のサラダやレバーのソテー、小魚のマリネや新鮮なほうれん草やチーズをふんだんに使ったオムレツ。健康な血液は美味ですからね。とくに男を知らない女性の血はまた格別かと……」
「セバスティ、余計な事を言わなくていい。イチ、血液が綺麗になると肌も美しくなると言う意味だよ。セバスティのムダ話は聞き流せ」
セバスティは『ヤレヤレ』といわんばかりに、溜息を吐きながら俺を見た。
夕食を終えたイチを一人で寝室に戻し、書斎に入った俺は本棚からこの国の歴史が書かれた書物を取り出す。町の小さな本屋で手に入れた品だ。
パラパラと書物のページを捲る。
「尾張国とはこの国のことなのかな?確か、イチの兄は織田信長……」
イチの話した言葉を思い出しながら、次々とページを捲り『織田信長』という名を見つけた。
織田信長、戦国時代の武将。父は織田信秀、兄弟は沢山いるようだ。血筋や直系を重んじる種族、俺達ヴァンパイアと似たようなものだな。
織田信長の妹、お市の方……。
もしかしてイチのことか?
お市の方は近江国の浅井長政に嫁ぎ子を生んでいる。夫、“浅井長政は天正元年自害。イチは天正十年、柴田勝家と再婚”している。
そして……
歴史書を捲る俺の手が止まった。
“天正十一年、戦いに破れた柴田勝家は北ノ庄城で市と共に自害”……!?
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