22
赤いポルシェの運転席にはマハラ。後部座席にはメリッサとルーシー。メリッサは耳に赤いピアスをつけている。二人とも赤いマニキュアに赤い口紅。身に纏う洋服は豹柄だ。
「断る」
俺はエンジンを吹かし、イチを乗せたままバイクを走らせる。
「フン、残念だったな」
セバスティもマハラに捨て台詞を吐き、バイクを走らせた。
俺達のバイクを赤いポルシェが抜き去る。マハラは俺の背中にしがみついたイチを、メスを狙う獣の眼で見つめた。
屋敷に戻った俺は、夜風で冷たくなったイチの手を掴みリビングに入る。
「イチ、大学はどうだった?」
「異国の方が沢山いて楽しゅうございました。わたくしと同じ目の色をした方は、同じ国の方でございますか」
「イチの住む尾張国が日本だとしたら、同じかもしれないな」
「ここは……日本でございますか」
「そうだよ。俺も日本の歴史は知らないが、俺もイチも時空を超えてこの地に来たのかもしれない」
「時空を超えて……?」
「そう、時を超えて」
「イチ様、そんな難しい話より、食事にしませんか?」
セバスティがパチンと指を鳴らすと、隣室のダイニングテーブルの上に豪華なディナーが一瞬にして並んだ。
イチはその光景に、目を見開いている。
魔術など見たことがないのだから、無理はない。
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