ジョエルside
18
「ジョエルこんばんは」
「こんばんは。
日本人、
働きながら酪農を学ぶ二人は、俺の友人。セバスティが右の掌を上に向けふぅーっと息を吹き掛けた。
「こんばんはイチ」
「……こんばんは」
セバスティの一吹きで、すでにイチは二人の友達だ。セバスティは大きく手を広げ、夜空に向けフーッと息を吹きかけた。キラキラと夜空を星が流れる。
これでこの地に住む者で、イチを怪しむ人間はいない。
「イチ、昨日また仔豚が死んだの。首には二つの牙の痕。また狼の仕業かな」
「狼?」
「深夜になると、狼の群れがここに現れて、家畜を殺すのよ」
「牛舎や豚小屋に鍵は掛けぬのですか?」
「鍵は掛けてあるけど。何処からか侵入するの。特に仔豚や仔牛が狙われるの。別の場所に隠しても何故か狼にバレてしまうのよ。けれど不思議なことに、狼は決して肉を喰い荒らしたりしない」
「殺した獲物の肉を食さないとは、奇怪なこともあるのじゃな……」
「美薗もイチもお喋りはそこまでだ。さぁみんな教室に行くよ。講義が始まる」
俺とセバスティはこの学校に餌となるべき人間を探すために入学したが、学生と親しくなり吸血することが出来ない。
情に厚いヴァンパイアなんて、亡き父が聞けばきっと嘆き悲しむだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます