17
ジョエルとセバスティは日中は仕事があると言い残し、一切姿を見せなかった。
『暖炉に薪をくべ、火をつけてはならない。暖はエアコンで取るように』ジョエルの言い付けを守り、陽が落ちるまで一人で過ごしたわたくしは、ジョエルとセバスティの帰宅を待ち、三人でバーニャ酪農大学に向う。
「ジョエル、これはなんという乗り物ですか?」
「これはバイク。馬よりも速い。俺の後ろに乗るがいい。セバスティ、イチにヘルメットを」
セバスティに赤いヘルメットを装着され、髪を結った時みたいにズシリと重く感じた。
「俺の体に抱き着け」
「抱き着く……!?セバスティの前でそのようなはしたない真似は出来ませぬ」
「バイクから振り落とされたいか?馬に乗るのと同じだ。行くぞイチ」
「……はい」
バイクのライトが放つ明るい光が、夜道を照らす。提灯の灯りしか知らないわたくしには、その眩い光が太陽の光の如く思えた。
バイクは大きな爆音をあげ、山道を突っ走る。ジョエルの申した通り、馬よりも速い。山を下ると広い道に出た。
見たこともない大きな物体が、目玉を光らせ道を走っている。その物体を器用に追い越し、ジョエルはバイクを意のままに操った。
「あれは何でございますか?」
「あれは車という乗り物だよ」
籠よりも大きな乗り物。
あの中に人が潜り込んで動かしているのだろうか。
ジョエルの首に巻いた赤いマフラーが、夜風に靡く。わたくしの長い黒髪も、夜風に靡いた。
大学に着くと、ジョエルと同じ髪色の異人が複数いた。けれどその中に、わたくしと同じ髪色と、同じ目の色をした人もいた。
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