16
――早朝、陽がまだ昇らぬうちに目覚めると新しい服が用意されていた。昨日着ていたドレスとは明らかに異なる。
「ジョエルこれは?」
「外出用の洋服だよ。これはセーター。羊の毛を染色し、赤く染め編んだものだ。そしてこれはジーンズ。イチの美しい脚を他の男には見せたくないから、大学にはこれを身につけるように」
「大学とは、どのようなことをする場所ですか?」
「色々な勉学をし、知識を学ぶところだ。俺達の通う大学はバーニャ酪農大学。馬や牛、豚や鶏も飼育している。夜間部に通う生徒は少数だが、結構楽しいよ」
「生きた動物を大学で飼うのですか?それは食する為でございますか?」
「動物の生態や習性を学びながら育てるんだよ。酪農家として家畜を育てる経験も積み、経営の勉強もする」
わたくしはジョエルに視線を向ける。
不安げな眼差しに、ジョエルは優しく語りかけた。
「イチ、何も怖がることはない。大学は男女共学で海外からの留学生も多い。殆どの学生は昼間は働き夜は大学で学ぶ。みんなこの国の事をよく知らないから、大学で学ぶのだよ。イチと同じだ」
「わたくしと同じでございますか?」
「そうだ。だから臆することはない。これがイチの学生証。イチの名前は、織田イチとしてある。歳は二十歳。海外生活が長く日本のことは何も知らない。住所は俺の家という設定だ」
「設定……でございますか?」
「そうだ。大学では俺の側から片時も離れるな」
「はい」
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