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 食事を済ませたわたくしは、ジョエルに広い屋敷の中を案内してもらう。


 賄いをするキッチンは、我が城の台所よりも手狭ではあるが不思議な形をした釜や、食物を温めたり調理するオーブンレンジという四角い箱があった。


 かわやには座って用を足す便器があり、ボタンひとつで水が流れる。


 そして寝所には、風呂もありシャワーという奇妙な形をしたものから、雨の如く頭上からお湯が降り注いだ。


「きゃああー……ジョエル止めて下さいませ」


 ジョエルの悪戯により、私はドレスを着たまま濡れ鼠のようにずぶ濡れとなる。


「ははは、ずぶ濡れだな。ドレスならセバスティに何着でも用意させるよ。ドレスを脱ぎシャワーを浴びるといい。ボディソープは体を、ヘアシャンプーやヘアトリートメントは髪を洗う時に使うんだよ」


「この国には色々な物があるのですね」


 全てのものが珍しい。

 ジョエルはドレスよりも薄い着物をわたくしに差し出す。


「これはシルクのネグリジェだ。寝るときに女性が着る物だ。下着のつけ方はわかるな?これはブラとショーツ。わからなければ俺が着せてやるよ」


「ジョ、ジョエル、なんと淫らなことを。早くここから去るがよい。決して風呂場を覗いてはなりませぬぞ」


「はいはい」


 ジョエルはニヤリと口角を引き上げ、脱衣所を出て寝所に向かった。わたくしは濡れたドレスを脱ぎ籠に入れ全裸となり浴室に足を踏み入れる。ジョエルに教わったとおりシャワーのボタンを押す。


 頭上から降り注ぐお湯が肌を濡らし、水滴が肌の上を転がり落ちる。ボディソープを手に取ると、柔らかな泡が掌の中で広がる。


 まるで真綿のような柔らかな感触に驚きを隠せない。

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