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「何が可笑しいのですか?」
「いや別に。これから俺がイチに色々なことを教えてやるよ」
「はい。楽しみにしております」
この国にある全ての物が、わたくしには珍しく、見たことも触れたこともない品ばかり。口にする食べ物は頬が落ちそうなくらい美味しい。
「あの……ジョエル様とセバスティ様は何も口にされないのですか?」
「イチ、俺達に敬称は不要だよ。ジョエルとセバスティでいい。俺達は赤き飲み物だけで生きていけるから、何も口にしなくていいのだよ」
「赤き飲み物とは何でございますか?」
ジョエルとセバスティはワイングラスをカチンと合わせ、二人で赤ワインの匂いを嗅ぎ一息に飲み干した。ごくごくと鳴る喉を見つめ、日に焼けた戦国武将とは比較できないほどに、透き通るような白い肌が美しいと思った。
「イチは今夜から俺と寝室を共にするのだ。いいね」
「……し、寝室でございますか?」
見ず知らずの殿方と同じ寝所で……。
わたくしの頬は火照り言葉に詰まる。ジョエルはわたくしの目を見つめクスクスと笑った。
「イチ、なにを想像している?エッチだな」
「エッチとは?どのような意味でございますか?」
「あとで、教えてやるよ。シャワーは寝室にある。自由に使いなさい」
「シャワーとはどのようなものでございますか?」
「それもあとで、教えてやるよ。この国で暮らすからには、その堅苦しい言葉使いは直した方がいいな」
「わたくしの言葉はそんなにおかしゅうございますか?」
「まぁな。男からすれば、艶っぽくもあるがこの地に相応しくない」
ジョエルに相応しくないと言われ、思わず口を閉ざす。国々で方言はことなるゆえ、致し方ないのかもしれない。
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