5
「何処で彼女を拾った?」
「俺達の堕ちた洞窟ですよ。蝙蝠を捕まえに行き見つけたのです。こんな美しい女は久しぶりに見ましたからね」
「あの洞窟に?」
俺は女性の顔をまじまじと覗き込む。
「おっと、お邪魔虫は退散しますね。煮るなり焼くなりどうぞごゆっくり」
セバスティはニヤリと笑うと、寝室のドアを閉めた。
真紅のシーツが掛かったダブルベッドに眠る女性。女性の煌びやかな着物に手を掛けゆっくりと脱がせる。
「……ぁぁ」
悩ましい声がふくよかな唇の隙間から漏れた。
男の欲望をそそる声だ。
ベッドのスプリングが大きく揺れ、女性がゆっくり瞼を開いた。
「きゃあぁー!何をするのじゃ。無礼者!誰か、誰かおらぬか!」
女性は脇差しを右手で抜くと、ベッドの上で勇ましく身構えた。キラリと光る短刀に俺は小さく両手を上げ降参する。
「おっと、待てよ。俺はあんたを助けたんだぜ」
「わたくしを……助けた?」
「正確に言うと、助けたのはセバスティだけどな。そんな物騒なものはこちらに渡して貰おうか。そんな短刀で俺を殺す事は出来ないよ」
「そなたがわたくしを助けたのですか……?失礼つかまつりました。あの……ここは一体何処で御座いますか?そなたは異国の方でございますか?髪の色は黄金色に輝き、目の色は海のごとく青い……」
「俺はジョエル。この国では……二十歳の学生だ。君は随分煌びやかな着物を着ているね。この辺りでは見掛けない顔だ。言葉使いもこの辺りの人とは異なる。君も異国から来たのか?」
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