「何処で彼女を拾った?」


「俺達の堕ちた洞窟ですよ。蝙蝠を捕まえに行き見つけたのです。こんな美しい女は久しぶりに見ましたからね」


「あの洞窟に?」


 俺は女性の顔をまじまじと覗き込む。


「おっと、お邪魔虫は退散しますね。煮るなり焼くなりどうぞごゆっくり」


 セバスティはニヤリと笑うと、寝室のドアを閉めた。


 真紅のシーツが掛かったダブルベッドに眠る女性。女性の煌びやかな着物に手を掛けゆっくりと脱がせる。


「……ぁぁ」


 悩ましい声がふくよかな唇の隙間から漏れた。


 男の欲望をそそる声だ。


 ベッドのスプリングが大きく揺れ、女性がゆっくり瞼を開いた。


「きゃあぁー!何をするのじゃ。無礼者!誰か、誰かおらぬか!」


 女性は脇差しを右手で抜くと、ベッドの上で勇ましく身構えた。キラリと光る短刀に俺は小さく両手を上げ降参する。


「おっと、待てよ。俺はあんたを助けたんだぜ」


「わたくしを……助けた?」


「正確に言うと、助けたのはセバスティだけどな。そんな物騒なものはこちらに渡して貰おうか。そんな短刀で俺を殺す事は出来ないよ」


「そなたがわたくしを助けたのですか……?失礼つかまつりました。あの……ここは一体何処で御座いますか?そなたは異国の方でございますか?髪の色は黄金色に輝き、目の色は海のごとく青い……」


「俺はジョエル。この国では……二十歳の学生だ。君は随分煌びやかな着物を着ているね。この辺りでは見掛けない顔だ。言葉使いもこの辺りの人とは異なる。君も異国から来たのか?」

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