「ジョエル様の喜ぶものです。なかなかの上玉、ただ奇妙な身形をしてますが……」


「奇妙な身形?」


 セバスティはニヤリと笑うと俺を物置小屋に案内する。小屋の屋根裏には無数の蝙蝠が飛び交う。


 廃材の上に覆い被さるように寝かされていたのは、腰まである長い黒髪をし、きらびやかな赤い着物を身につけた美しい女性だった。


 顔の血色は悪く色白だが、唇はふくよかで紅き唇をしていた。


「いい唇の色をしているでしょう?美味そうな血の匂いがします。どうぞ存分にお召し上がり下さい」


 セバスティは舌なめずりをし、その奇妙な身形の女性を見つめた。


「この辺りで見ない顔だな。それにこの辺りでは見慣れない煌びやかな着物を着ている。なんと美しい」


「それほどまでにお気に召しましたか?ジョエル様屋敷に連れて戻りますか?それともここでお召し上がりますか?ジョエル様もこの地に来て人の生き血を食してないでしょう」


「そうだな。人の生き血は久しぶりだ。だが、何故このような奇妙な姿をしているのか聞いてみたいものだ」


「ではお楽しみは後になさいますか?」


「この女を寝室に運べ」


「はい。畏まりました」


 気を失っている女性を、セバスティは軽々と肩に担ぎ、屋敷の中に入り二階の寝室に運んだ。

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